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2019/07/25
コラム
「CES Asia 2019」 現地レポート|中国コラム

2019年6月、中国・上海で「CES Asia 2019」が開催されました。「CES(Consumer Electronics Show=家電見本市)」とは、1967年に全米民生技術協会(CTA)がニューヨークでスタートした世界最大規模のテクノロジーショーで、現在は毎年1月にラスベガスで開催されています。元々は家電が主役の見本市でしたが、技術の発展に伴い、最先端テクノロジーやそれらを活用した事業、サービス、商品の展示へと進化してきてました。

そのアジア版「CES Asia」は、2015年に上海で初めて開催され、中国の成長とともに着実にその存在感を高めてきています。ラスベガスに比べると、来場者数はまだ1/3ほどですが、中国を最大市場と捉えるグローバル企業の増加とともに、CES Asiaも最先端技術の発信の中心地として拡大していくと考えられます。


CES Asia
会場エントランス

実際に会場を訪れてみると、AI、音声認識、スマートホーム、5G、EVなど、世の中に大きく影響を与える最先端テクノロジーで溢れていました。その中で、特に私が気になったテクノロジーを皆さんにご紹介したいと思います。

まず初めに、電気自動車のトレンドをご紹介します。自動車業界に詳しい方はご存知でしょうが、中国は世界最大の自動車市場であると同時に、世界の電気自動車の販売台数の半分近くを占める「EV大国」でもあります。2018年には、中国国内におけるEVの販売台数は130万台を記録しました。この急成長をドライブしてきた購入補助政策は縮小が進んでいますが、それでも2020年には200万台の大台に乗ることが予測されています。このような大きなチャンスが存在する市場で、複雑な内燃機関を必要としないことも背景に、従来の伝統的な自動車メーカーに加え、新興企業も次々と参入してきています。

今、最も注目される新興EV企業の一つとされる「BYTON(バイトン)」という会社はご存知でしょうか。2017年に設立され、「クラウドネイティブ」な中国EVベンチャーとして業界内で話題となっている会社です。今年のCES Asiaに出展はしなかったものの、CEOのDaniel Kirchert氏がキーノートに出席し、今後のBYTONの事業計画を話しました。


BYTON
BYTONのショールーム

BYTONの最大な特徴は49インチの細長い巨大ディスプレイを搭載し、ユーザーの希望に応じて、すべての座席にタッチパネルを設置することが可能な点です。また顔認証機能、音声・ジェスチャー認識でも車の様々な機能を操作することができ、モビリティをリラクゼーションやエンターテイメントの空間に変えるこれまでにない新しいスタイルのEVです。


BYTON
SUVタイプのEV「M-Byte」
BYTON
「M-Byte」のインテリア

講演では、ユーザー視点で求められるニーズへ応える「Fineness(品質)」、「Aesthetics(美学)」、「Convenience(便利)」、「Technology(技術)」を意味する「FACT」という新しい概念が発表されました。さらには、全てのBYTONユーザーにパーソナライズドされた体験価値を提供するプラットフォーム「BYTON ID」や、2019年末の量産スタートに向けた準備体制についても着実な進捗が共有されました。

無論、新興EVメーカーだけではなく、従来の自動車メーカーもどんどんEVに力を入れています。例えば、初日にキーノートを行ったHyundaiは、「MECA」として、「Mobility as a Service(MaaS)」、「Electrified」、「Connected」、「Autonomous」を5GとAIによる産業革命4.0時代のモデルとして提唱し、世界各国で「Last One Mile」問題を解決する手段として注目が集まっている電動キックボードも含めた「サービスとしての移動手段」構築のためのサブスクリプションモデルの導入を進めています。


キーノート

BYTONとHyundaiだけではなく、Nissan、Honda、Audi、Mercedes-Benz、SAIC Motor(ローカルメーカー)、WM Motor(ローカル新興EVメーカー)など、ローカル、外資、日系メーカーがこぞってEVや自動運転に注力している様子でした。


Audi
Audiのブース
日産
自動運転を体験できるNissanのブース
WM Motor
WM Motorのブース

私は、2016年にDaimler AGが提唱した自動車業界の革新となる概念「CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)」が最も実現に近づいているのは中国であると考えています。それは、「CASE」を前提とした新しい顧客とのつながり、顧客との関係育成(ナーチャリング)やブランドづくりの新しいモデルが、世界に先駆けて実装が進んでいくということを意味します。また、この変化が、自動車業界に限らない変化であることは、中国で先端的なマーケティング活動を進めている企業を見ていると明らかに感じ取ることができます。それらの動向も今後レポートしていきますので、お楽しみに!

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